「2009年、セガが『スーパーマリオブラザーズ』風のソフトを任天堂ハードで発売する」ことを20年前の人に教えたら、1989年に生きている人々はどう思うでしょう。僕は「セガならやりかねないな」と思うと思います。
『スーパーマリオブラザーズ』が大ヒットしたことで、あの当時2Dアクションゲームが巷に溢れまくりました。多くの人が『マリオ』の何が面白いのかを研究し、ある部分はマネて、ある部分はオリジナルなものを作って、多くのヒットソフトを生みました。
セガも『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』という2Dアクションゲームをヒットさせていますね。マリオのBダッシュを凌駕するスピード感がその魅力だったのでしょう。
この『珍ポの大冒険』も、時代を超えて『スーパーマリオブラザーズ』の系譜を受け継いだ作品の一つです。パッと見だと、『スーパーマリオ』と違ってBダッシュは出来ないわ、銃で敵を撃っていくゲームだわで似ても似つかないゲームです。どっちかというと、『スーパーマリオ』の亜流として後から山ほど出てきた2Dアクションゲームに似た印象を受けました。
しかし、何故だか『マリオ』っぽい。
それは単にレンガやキノコと言ったオブジェがという話ではなく、「あー、『マリオ』の魅力ってこういうところにあったんだよなぁ」と思い出させるものだったのです。 |
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○ 寄り道できる楽しさ
『珍ポの大冒険』はオーソドックスな横スクロール2Dアクションゲームですが、クリアとは別にそこら中に仕込まれている「ネタ」を探すゲームでもあります。「ネタ」に対しては「ツッコミ」が入り、見つけた「ネタ」はストックされてギャラリーでいつでも閲覧が可能です。「ネタ」は普通に進んでいるだけで見つけられるものから、特定の方法で死なないと見られないものまであります。
「死に方」すら「ネタ」になる―――これが『珍ポの大冒険』の最大の特徴だと思います。
真っ直ぐにクリアする楽しみもあるけれど、色んなところに寄り道をして「ネタ」を探す楽しみがある、と。
思えば『スーパーマリオブラザーズ』も寄り道の楽しいゲームでした。
ただ真っ直ぐに進むだけでなく、土管の中に入ったり、雲の上に登ったり、どこそこに隠しアイテムがあるだとかそれを取るためにはどうしたらイイのだかを考えたり話し合ったりするのが楽しかったんですよね。もちろん、その寄り道の御褒美として1UPキノコやらコインやらがもらえるという魅力もありました。
DSの『NEWマリオ』で「クリアだけなら比較的簡単」だけど「スターコインを全て入手するのには寄り道が必要」となっていたのも、この『珍ポの大冒険』で「クリアだけなら簡単」だけど「全てのネタを探すためにはワザと死んだりしなきゃならない」のも、どちらも『スーパーマリオブラザーズ』の寄り道の楽しさを引き継いだ結果じゃないかと思いました。
ただ、それを言うと『珍ポの大冒険』は「寄り道」のバリエーションが少なすぎますね。
それこそ『スーパーマリオブラザーズ』の「まっすぐ進む」「土管の中を進む」「雲の上を進む」というように、複数ルートを用意してそれぞれのルートにネタが仕込まれているという方がネタを探す楽しみが出たんじゃないかと思います。このままだと「みんながみんな同じ体験をしている」だけで、単に「ネタが面白いか」みたいな話になってしまって、「ゲームとしての面白さ」とは乖離しているような気がします。
○ 接待ゲームとしての面白さ
「ネタ」の面白さで言うと、どうしたって好き嫌いは分かれるでしょう。
個人的には「ベタベタなネタ」に「ゆるくツッコむ」このテンポは嫌いじゃなかったですが、それでも1回ミスってやり直しになった後に同じツッコミを見ると「もうちょっとバシバシツッコんでいけよ!」とイライラさせられることはありました。複数ルートを用意してくれたらこういう不満も感じなかったんでしょうけどねー。
しかし、このゲーム……どっちかと言うと接待用でこそ活きるゲームなのかも知れませんね。
『スーパーマリオ』だってそうでした。一人で遊ぶよりも、友達同士で集まって交替交替でプレイしたり、どこそこに隠しブロックがあるだとかワープはどこだとかの情報を交換したりして楽しんだものです。だから、「死に方」すらネタになった。華麗にクッパを倒す上級者のプレイも、トホホなミスで死んでしまう初心者のプレイも、同じようにワハハと楽しめたんですよね。
『珍ポの大冒険』も「一人では遊ばないで」とか「家族や友達にオススメしよう!」といったように複数人でのプレイをスタッフも推奨しているようです。一応ゲーム内に「ツッコミ」は用意されていますが、それをオフにして自分たちで「ツッコミ」を入れて楽しむことも出来るワケです。
このゲームをやったことがない人に「こんなゲームがあるんだけどやってみない?」と言いたくなる―――そう考えると、このゲームが『スーパーマリオ』風なのも、Wiiで発売されるというのも分かる気がします。接待用に特化したWiiというハードで2Dアクションゲームを作ると、この方向性は非常に理に適っているのかも知れません。
どっちかというと『アルキメDS』とか『うつすメイドインワリオ』みたいな、コミュニケーションツールという側面が強いのかも。
そう考えると「ネタが面白いか」というのはあんまり重要ではなかったのかなーと思ったりしました。
ただ、接待ゲームとして捉えると致命的な点が一つ。
このゲームはセーブデータが一つしか作れないんですよ。ステージセレクトがあるから最初からやってもらえば良いじゃないかと思うかも知れませんが、「ネタ」を見つけるたびに1つずつカウントされるのが楽しいゲームなのだから、接待用で友達に遊ばせる時も「0」から始めさせるべきだと思います。「友達を呼んで遊ばせたくなるゲーム」なのに、「友達を呼んで遊ばせる時のシチュエーション」をあまり考えていないなぁと思いました。
○ 総評
Wiiウェアのソフトに対してはいつも同じ感想を書いている気がしますが、「コンセプトはイイのだから、あと一つプレイヤーへの気遣いを足すだけで化けたのになぁ」という印象を持ちました。もちろん、その気遣いをする余裕がないアイディア勝負のソフトだから低価格路線のWiiウェアということなんでしょうけどね。それでも「勿体ない」と言わざるを得ません。
1周目クリア後には難易度アップの2周目があるのですが、僕は2周目ステージ1のボスにも勝てなかったのでそれについてはあまり語れません。ステージセレクトも「1-1」「2-1」からのスタートではなく、「1-2」や「1-3」からも始められたら良かったのに……というのは、ゲームが下手くそな僕の勝手な言い分ですね(笑)。
相手のパターンをよんだり覚えたりというアクションゲームは苦手なんですよ……
ただ、このゲーム……本当に特筆すべきはそのプロモーション方法だったかも知れませんね。
ご存知のとおりWiiウェアソフトの価格は安く、宣伝費はほとんどかけられません。『珍ポの大冒険』も宣伝費はほぼ0円ということで、スタッフが時間を見つけてホームページやブログを作成したらしいです。ここまではよくある話。
加えてこのゲームは内容が内容だけに個人ブログなどでも取り上げられることが多かったですし、プロデューサー自らの実況プレイの配信や、ニコニコ動画への実況プレイ動画のアップを推奨をしたり(ツッコミの字幕・音声をオフに出来る機能もある)。応援してくれるブログを募集して抽選で非売品サウンドトラックが当たるとか、壁紙にするキャラクターの人気投票を行うとか―――
恐ろしく俊敏なプロモーションをおこなった結果、現在のところWiiウェアダウンロードランキング1位という。Wii版『ナイツ』発売直前にPS2版を発表してしまった、バカ正直なセガのプロモーションとは思えませんね!!
500円だから許される悪ふざけ。
僕も唯一のオフフレンドにプレゼントでこのゲームを贈りました。「ちょっとやってみろよ(ニヤニヤ)」と人に薦めたくなる魅力があるんですよね。「何だよあの下らないゲームは!」と、ネタそして許されるのは500円だから。ブログに書きたくなってしまうのは、自分もこの悪ふざけに加担したくなるから。ゲーム単体だけなら「勿体ないゲーム」なんですけど、配信前から配信後までの一連の流れは文句なしに楽しかったです。
「ゲームって楽しんだもの勝ちだよな」を思い出させてくれたゲームでした。 |