過去のゲーム紹介一覧



『428〜封鎖された渋谷で〜』(Wii/ADV) 〜2010.12.10
Wii用/サウンドノベル
セガ/開発:チュンソフト
2008.12.4発売
7140円
『みんなのおすすめコレクション』版:2800円
セーブデータ数:3
公式サイト
 自分が本格的にノベルゲームをプレイするのは、恐らくスーパーファミコンの『弟切草』以来です。
 『弟切草』が92年のゲームで『428』が08年のゲームですから、16年間分の進化を飛び越えていきなり“最近のノベルゲーム”をプレイしたワケです。正直驚きました。ノベルゲームって今こんなになっているんだ、と。

 この16年間でノベルゲームの立ち位置というのは随分変わりました。
 PCゲームを中心に人気ジャンルとなっているので、16年ぶりにノベルゲームをプレイした自分のような人間がノベルゲームを語ることで、ノベルゲームファンからは「オマエ何偉そうに語ってんの?」と言われるかも知れません。


 
しかし、自分と同じようにスーパーファミコン以降ノベルゲームをプレイしていないって人は、実は沢山いると思うんです。
 スーパーファミコンの『かまいたちの夜』(94年)は125万本の売上げを記録した大ヒットソフトでしたが、『かまいたちの夜2』(02年)は約34万本、『かまいたちの夜3』(06年)は約15万本とみるみる数字を落としていますし(数字はWikipediaより)。
 超大ヒットソフトと言われている『Fate/stay night』でさえもPC版(04年)、PS2版(07年)ともに20万本前後らしいので………実はノベルゲームというジャンル自体、格闘ゲームやシューティングゲームのように、かつては100万本クラスでヒットして追随ソフトが沢山出たのだけど、現在は一部の熱狂的なファンによってのみ支持されているジャンルになってしまったとも言えると思うのです。



 だから、自分と同じように「えー、今更ノベルゲームなんてやる気になれないなぁ」と思ってしまう人にこそ、今現在のノベルゲームの凄さを知ってもらいたいと思ってこの紹介記事を書きます。

 ノベルゲームの良し悪しはストーリーによって決められる部分が大きいのですが、このゲームは少しでもネタバレされずにプレイした方が楽しいのは間違いないので―――このゲームを気に入るであろう人に、ストーリーのネタバレなしで興味を持ってもらうためにはどうしたらイイのかと考えまして。とりあえず、


 
ヒロイン役の近野成美さんが素晴らしく可愛い!

 そして、誘拐された姉を救うために走り回る妹、というイチャイチャ姉妹話!



 
どうだ!!




 「どうだ!!」じゃないか(笑)。

 近野成美さんはパッケージの画像だとキレイな美人さん系で2011年現在はまさにそんなカンジなのですが、このゲームの中だともうちょっと幼さが残っていてロリ可愛いカンジです。表情がとっても豊かなんです。亜智にミスキャンパスだということが知られた際の照れた表情が一番破壊力高いと自分は思いまする。

 また、渋谷という街を舞台にした群像劇なので、5人の主人公はもちろん、その他にもサブキャラクター達が沢山出てきて彼ら・彼女らにもしっかりとバックボーンがありまして――――そこでは様々な人間ドラマが描かれるのですが、実は作品全体に共通して「父と子」という一本の柱があって。だからこそ、一つ一つの描写が増幅していくという面白さがあるのです。


 ふむ……ネタバレなしでストーリーの魅力を伝えられるのはこの辺くらいまでですかねぇ。
 なので、ここから先は「ゲームとしての魅力」を語ろうと思います。
 




○ 『弟切草』の記憶
 ちょいと年寄りの昔話を聞いておくんなまし。
 『弟切草』が発売された92年というのは、スーパーファミコン本体が発売してから1年半後という時期です。

 当時の一般的な子どもからすると、数年前に親にねだってねだってねだりまくってようやくファミコン本体を買ってもらえたのにも関わらず―――なんか知らんけど突然現れたスーパーファミコンという存在に、「でも今からまたスーファミ本体をねだるワケにもいかない……」と思っていた時期なんです。スーファミ本体を買うお金で、ファミコンのソフトが何本も買えましたしね。

 感覚的には、ニンテンドーDSが普及した後のニンテンドー3DSの現状に近いかも。


 なので、自分も「スーパーファミコンならではのゲーム」に出会うまではスーファミに魅力を感じませんでしたし、感じないようにしていました。友達の家でプレイした『スーパーマリオワールド』や『ファイナルファンタジー4』は凄かったですけど、「でもこれ本質的にはファミコンの頃と変わらないよね」とか言って誤魔化していました。生意気な小学生だなんて言わないで、健気だったんですよ。


 
そこで見た『弟切草』の衝撃と言ったら!
 まずファミコンでは難しかった漢字表示をいとも簡単にやっていることに加え、小説がまるまるソフトに入っているどころか、選択肢によってストーリーが変わるという未知のゲームで―――当時本気で「ゲームってこんなに進化しちゃったんだ!」と思いました。あの衝撃に比べると、それ以後のゲームの進化には大して驚かなくなってしまいました。絵がキレイになろうが、フィールドが3Dになろうが、本質的には変わらないじゃない――と。



 ということで――――
 友達の家で『弟切草』をプレイした際の衝撃を忘れられず、後にスーパーファミコン本体を買った際には(確か買ったのは兄貴だったと思うけど)我が家でも『弟切草』を買ったのです。わーい、遊びまくるぞー!!

 とは、いかなかったんですね。


 初代の『弟切草』は既読スキップもありませんでしたし、フラグ管理もちんぷんかんぷんな自分としては、ただ漠然と何度も読んで黙々と新しいエンディングを探す作業になってしまって―――3〜4回目で飽きてしまいました。元々ゲームを何周もすることに向いていなかったというのもあるのか、友達の家で初めて見たエンディング以外は「ウソのエンディング」って感じがしちゃったんです。




 『弟切草』はノベルゲームというゲームの新しい可能性を切り開いたゲームだったと同時に、ノベルゲームが抱えている構造的な問題をいきなり突きつけたゲームだったと思うんです。

・周回プレイ前提ゆえに、1回ごとのプレイへの感情移入の難しさ
・黙々と選択肢を選ぶだけという受動的プレイ


 既読スキップやフラグ管理などのUIはこの後に改善されていったそうなんですが、それは根本的な問題の解決にはなっていないと思うんですね。「○○ルート」「××ルート」「△△ルート」と沢山のシナリオがあるから何周でも楽しめますよ!と言われても、ゲームを何周も遊べる人って限られた人だと自分は思うのです。
 マルチエンディングはノベルゲームが一部のファンだけのものになっていった一つの要因じゃないかなと自分は思っています(同じアドベンチャーゲームでも、高い売上げの『逆転裁判』や『レイトン教授』は1周プレイを前提としたゲームになっている)。


 さぁ、そこで『428』ですよ。




○ 「たった1つの正解ルートを探す」能動的ノベルゲーム
 チュンソフトのノベルゲームは、『弟切草』が第1弾、『かまいたちの夜』が第2弾、『街』が第3弾で―――この『428』は『街』というゲームをベースにした続編らしいのですが……これが、上に書いたような自分がノベルゲームに抱いていた苦手意識を吹き飛ばすようなゲームシステムとなっているんです。

 『街』も98年のゲームなんで、「何を今更……」と思われるかも知れませんがご容赦くださいな(笑)。
 誰もがみんな発売しているゲームを全部やっているワケではないのですよ。




 このゲームの主人公は5人。

・誘拐事件の解決に奔走する刑事:加納
・ひょんなことから誘拐事件の被害者の妹と渋谷を逃げ回ることになった青年:亜智
・見捨てられた出版社を救うために、8時までに渋谷中を取材して記事を書かなくてはならないライター:御法川
・誘拐事件の被害者の親:大沢
・雑貨屋のネックレスを買うためにダイエット飲料の販売イベントのバイトをする:タマ


 およそ接点がなさそうな5人の、別々の小説を同時並行に読んでいくというのがこのゲーム。
 マルチシナリオのアドベンチャーゲームやノベルゲームは共通のスタート地点から「○○ルート」「××ルート」「△△ルート」と分岐していくのが一般的だと思うのですが、このゲームは逆に最初から「○○編」「××編」「△△編」と分かれている小説を読み進めて1つの結末まで向かうというゲームなんです。基本的には結末は1つなので、何周もプレイする必要はないのです。

 当然、小説は単に読んでいけばイイというワケではなく。
 例えば……タマ編を普通に読んでいくと、借金取りが押しかけてきて販売イベントが中止になってしまってBAD ENDになってしまいます。なので、並行して読んでいる別の小説に切り替えて、別の主人公が借金取りにウソの道を教えることでタマ編のBAD ENDを回避するという手順が必要なんです。


 つまり、「たった一つの正解ルート」のために、プレイヤーが主人公を切り替えつつ、
彼らの物語に介入していくというゲームなんです。


 これだけ書くと「うわぁ……すごく難しいゲームなんじゃないのか…」と思われるかも知れませんが。
 「10時−11時」「11時−12時」「12時−13時」といったように1時間ごとに1ステージとなっていて、選択肢が他の物語に影響を与えるのはこの「1時間ごと」の範囲に限定されているため、一般的なアドベンチャーゲームのフラグ管理よりは遥かに簡単に出来るようになっています。

 そもそもBAD ENDになるとヒントをもらえますし、今まで読んだ場面は簡単に切り替えて選択肢だけ変えることも分かりやすく出来るようになっていますし――――
エンディングまでなら比較的多くの人が辿り着けるようになっているんじゃないかと思います。ノベルゲーム初挑戦のウチの母でも辿り着けましたし。



 むしろ難易度が高いのはBAD END探しの方です。
 BAD ENDは「不正解ルート」なのでもちろんわざわざそっちを探す必要はないのですが、このゲームはBAD ENDに1つ1つ番号が割り振られていてリスト化されるので―――収集癖のある人間はどうしても全部のBAD ENDを集めたくなるのですよ!

 これがまた……複雑にフラグを組み合わせないと出てこないBAD ENDがありましてねぇ……
 やっとの思いで見つけた時には俺ガッツポーズ、画面の中では主人公が発狂している、なんてこともあったりで(笑)。




○ 万人が楽しめる、を目指したゲーム
・主人公の切替や過去の選択肢を変えるのに使う「タイムチャート」はサムネイル画像が出るので分かりやすく、非常に操作しやすく。
・ポイントポイントでオートセーブされるために「ちょっと10分」でもプレイしやすく。
・一度読んだ文章は上下ボタンでいつでも読み返せる上に、チェックポイントごとにスキップ可能。
・初めてノベルゲームを遊ぶ人に向けて親切なガイドがあって、「10時−11時」はまるまるチュートリアルのように使われていて……
・セーブデータも3つまで作れて。


 このゲームは「とにかく続きが気になるストーリー」と、「ストーリーにプレイヤーが直接介入しているように思えるゲームシステム」が高く評価されていると思うのですが……それに加えて、ノベルゲームに慣れていない人でもしっかりと遊びやすく考えられているというところも大きいなと思います。

 また、実写の静止画+小説という組み合わせは想像以上に表現力が豊かで、
映画にも小説にも出来ない“コレしかないエンタテイメント”になっているとさえ思いました。映画では描くのが難しい心理描写やアクションシーンも可能だし、小説を読むのが苦手な人は画像があることが取っ掛かりになるでしょうし。
 なるほど、これは多くの人がオススメしてくるゲームなワケだと思いました。




 ということで……基本的には大絶賛なのですが、不満点も。
 「エンディングまでなら比較的多くの人が辿り着ける」と書きましたが、それは「ノーマルエンディング」の話であって「真のエンディング」は自力では難しいです。僕も見つけられなかったので攻略サイトに頼りました。アドベンチャーゲームに慣れていない人は厳しいかも知れませんね。
 「ノーマルエンディングに辿り着けているんだからイイじゃないか」と思われるかも知れませんが、ノーマルエンディングはぶっちゃけ後味悪いんで僕はポカーンとしました。「え?これでラスト?」と。

 Twitterで話を聞くと「真のエンディングは観ていない」って人も結構いまして、そういう人の中ではあのラストでこのゲームが締めくくられているということなので、それは非常に残念な話だなって思うのです。


 また、このゲームはクリア後のオマケ要素も沢山ありまして。
 ゲストによるサブキャラクターの小説だったり、特定の場所でコマンド入力することで隠しエピソードが出てきたり、超難しいカルトクイズがあったり。クリア後も楽しめるようにという目論見なんでしょうが………正直、超面白かった本編の記憶が薄れていくようなオマケ要素でした。

 特定の場所でのコマンド入力やカルトクイズのヒントをWiiConnect24をオンにすると受け取れるというサービスがあって、これはファンサービスとしても中古対策としても面白い試みだなと思うのですが、Wiiをネットに繋いでいない人には自力で探すのは無理ゲーと化していまして。結局は攻略サイト頼みになりかねないというか。



 出すのが超難しい隠し要素は「チュンソフトのゲームでは恒例」ということなんで、やらないならやらないでファンは残念だったんでしょうけど……本編の方が「万人が楽しめる極上のエンタテイメント」となっている分だけ、オマケ要素の「楽しめるヤツだけついてこい」という姿勢が、ぶっちゃけ人にオススメしづらくしている残念な部分になっているなぁと。

 せめて「真のエンディング」にもうちょっとヒントがあれば印象は変わったんですけど………




○ 総括
 ゲームを売るのって難しいんだろうなあと考えさせられた1本でした。

 映画にも小説にも出来ない極上のエンターテイメントだと書きましたが、本来なら「ゲームにだって出来ない」ことなんですよ。それくらい手間とお金がかかっちゃっているゲームだと思います。現在のノベルゲームの市場規模からするとありえないほどお金をかけて作られた分、その採算を取るために本編以外の部分に色々と肉付けしていったのがオマケ要素なんでしょう。
 オマケシナリオをTYPE-MOONに書いてもらったのはファン層拡大のためでしょうし、WiiConnect24でヒントが送られてくるのは中古対策のためでしょうし。そうした努力は分からなくはないんですけど、結果として
大傑作の本編とは釣り合っていない“取ってつけた感”がどうしてもしてしまいました。


 とりえあず……現在ではこのゲーム、Wii版だけでなくPS3版、PSP版も出ていますし、それぞれがベスト版になっているので“3000円前後”で購入できるということもありまして。より沢山の人が手を出しやすい環境が整っています。

 オマケ要素を全無視しても構わないから、一人でも多くの人に手に取ってもらいたいなと思います。


 


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